「血圧が下がってる!どうしよう……」と、数字だけを見てパニックになったことはありませんか?
「これって急変?」「出血?」「とにかくヤバいよね……」と頭が真っ白になる新人さんを、私は臨床で何度も見てきました。
先輩から「血圧が低いときは心拍数も見て!」と言われても、なぜセットで見る必要があるのか、理由までパッと答えられる人は意外と少ないものです。
私はNP(診療看護師)として多くの急変現場に立ち会ってきましたが、優秀な看護師ほど血圧の「数字」ではなく、心拍数との「関係性」を瞬時に判断しています。
血圧低下は体からのSOS!
そのSOSに心臓がどう応えているかで、今すぐドクターコールすべきか、緊急度が決まるからです。
この記事では、現場で迷わないための「判断の軸」を整理しました。
【この記事でわかること】
・血圧が下がったとき、心臓が「頑張っているサイン」の見分け方
・「血圧も心拍数も低い」ときに現場で真っ先に疑うべきこと
・先輩を納得させる、バイタルアセスメント報告の「黄金セット」
読み終える頃には、血圧低下の報告で「えーっと、心拍数は……」と詰まることがなくなりますよ。根拠を持った報告ができるようになりましょう!
結論:血圧低下は「数値」ではなく「反応の組み合わせ」で考える!
症例
PCI後のAさん
63歳。女性。本日LAD(#7:99%)に対してPCI(POBA ,Rota ,STENT)施行
PCI中に一時的に血圧低下し、NAD使用。穿刺部:Rt.Femoral A
病棟帰室後30分のラウンドで訪床。
血圧:80/35mmHg、心拍数:42/min、SpO2:97%、冷や汗、吐き気の訴えあり 胸痛なし
略語・補足説明
LAD:左前下行枝 → 冠動脈はLADの他に、RCA:右冠動脈、LCX:左回旋枝冠動脈があります
PCI:経皮的冠動脈インターベンション → 狭窄・閉塞した冠動脈を拡張させて、血流を改善させる治療
POBA:バルーン血管拡張形成術 → 病変部をバルーンで拡張させる手技
Rota:ロータブレータ → ドリルを高速回転させ、石灰化病変を切削させる手技
STENT:ステント → 網目状の金属の筒を冠動脈の内側から留置する手技
NAD:ノルアドレナリン → 昇圧薬。主に血管収縮作用を示し、血圧を上昇させる。
Rt.Femoral A:右大腿動脈 → PCIでは橈骨動脈や上腕動脈、大腿動脈を穿刺して治療します
わんさっきはドタバタしてたけど、どうしたの?
にゃん受け持ちのAさんが血圧低下したんですよ💦
わんそれは大変だったね!
その時の心拍数はどうだったの?
にゃんえっと…血圧が80台だったのは覚えてるんですが…
なんで心拍数なんですか?
わん血圧が低下した時は心拍数によって考えることが変わるんだよ
じゃあ、今から血圧と心拍数の関係について教えるから、次からは、心拍数も意識できるようにね!
にゃんはい!
お願いします!!
なぜ血圧が下がると心拍数が上がる?「体が頑張っている」サインを見逃さない
血圧が下がったときに心拍数が上がるのは「体が必死に耐えている証拠」です。これを「代償」と呼びます。まずは、この体の防衛反応を理解しましょう。
血圧維持の仕組み:心拍数は血圧を支える「最後の砦」
血圧は、心臓が送り出す血液の量(心拍出量)と、血管の締まり具合(末梢血管抵抗)で決まります。
イメージで言うと、「バケツの水の量」を保つために、ポンプである心臓が必死に動いている状態です。
どこかで出血したり、脱水で水分が足りなくなったりすると、バケツの水が減って血圧が落ちます。
このとき、心臓は「このままじゃ脳に血が届かない!」と判断し、ポンプの回転数(心拍数)を上げてカバーしようとするのです。
「頻脈(タキる)」は体が必死に耐えている証拠
「脈が速い=異常事態」と思われがちですが、血圧が低いときの頻脈はむしろ正常な防衛反応です。
心臓が頑張ってバタバタ動くことで、なんとか血圧を底上げしようとしています。
新人さんは「血圧が低くて、脈も速い!ダブルで異常だ!」と焦りますよね。
でも、まずは「心臓はちゃんと戦っているな」と捉えてください。
ここを確認できるだけで、アセスメントの第一歩はクリアです。
ショックの初期段階で心拍数が跳ね上がる理由
出血性ショックや敗血症などの初期では、まず心拍数が跳ね上がります。
これは、血圧を維持するための「予備能力」を使い果たそうとしている状態です。
逆に言えば、血圧がまだ維持できているのに、心拍数だけ上がっているときは超要注意。
心拍数が破綻して、これから血圧がドカンと下がる前兆かもしれません。
「数値が正常範囲内だから大丈夫」と油断せず、脈の変化に目を光らせましょう。
にゃん血圧が下がると心拍数も一緒に下がると思ってました💦
どっちも低い方が怖くない気が……
わんそれは勘違いしやすいポイントだね。
心拍数が上がるのは、心臓が頑張って血圧を保とうとしている証拠。
むしろ「上がっていない」ときの方が、事態はもっと深刻なんだよ。
【要注意】血圧も心拍数もダブルで低下!「体が諦めた」瞬間の見極め方
一番怖いのは、血圧も心拍数も同時に下がってしまうパターンです。
これは、体がもう自力で維持できなくなった、いわばギブアップのサインです。
「血圧低下+徐脈」がなぜ怖い?心拍出量の計算式で考える
血圧を構成する計算式を思い出すと、怖さがわかります。
血圧 = 心拍出量(1回拍出量 × 心拍数) × 末梢血管抵抗
この式によると、心拍数が下がると、送り出される血液量(心拍出量)はダイレクトに減ります。
血圧が低いのに心拍数まで下がると、脳や臓器に血液を送る手段が完全になくなってしまいます。
これが続くと、あっという間に意識を失い、心停止に至る危険があるのです。
頑張りたくても頑張れない…心臓の「ギブアップ」状態とは
心拍数が上がらない原因はなんでしょうか?
理由はいくつかありますが、代表的なのは以下の3つです。
- 薬剤の影響(β遮断薬などで心拍数が抑えられている)
- 心臓自体のダメージ(心筋梗塞の末期など、動く力が残っていない)
- 自律神経の暴走(迷走神経が強く働きすぎている)
いずれにせよ、心臓が「もう無理だ」と言っている状態です。
「再測定」を繰り返してはいけない、一刻を争うバイタルパターン
このパターンのときに「機械の故障かな?」と思って、何度もマンシェットを巻き直すのはNGです。
血圧計を巻き直している間に、脳への血流はどんどん減っています。
もし血圧が低くて、脈も遅い(例えば40台など)と感じたら、再測定する前に応援を呼びましょう。
「なんか変です!血圧も脈も下がっています!」という一言で、周囲の動きは変わります。
にゃんなるほど!どっちも低いときは、すぐに応援ですね!
わんその通り!心拍数も低いなら「再測定している場合じゃない」と判断しよう。迷わず応援を呼ぶ勇気が、患者さんを救うんだ。
PCI後の「血圧低下×徐脈」はこれ!血管迷走神経反射(VVR)を疑う視点
循環器病棟やカテ室で特によく遭遇するのが、このパターンです。
カテ後、急に元気がなくなった患者さんを見たことはありますか?
【症例】カテ室から帰室後、急に血圧と心拍数がガクンと落ちたら?
PCIが無事に終わって病棟に戻ってきたAさん。さっきまで元気に話していたのに、急に「気持ち悪い……」と顔色が悪くなりました。測ってみると、BP:80/35mmHg、HR:42回/分。
このとき、あなたならどう動きますか?
痛みや緊張が引き金に。副交感神経が暴走するメカニズム
カテ後の血圧低下+徐脈で真っ先に疑うのが血管迷走神経反射(VVR)です。
圧迫止血時の痛みや、治療が終わってホッとした緊張の緩和が引き金になります。
本来、血圧が下がれば交感神経が働いて心拍数を上げるはずです。
しかし、VVRでは副交感神経が暴走してしまい、逆に心拍数を下げ、血管を広げてしまいます。
その結果、血圧と脈が同時にガクンと落ちてしまうのです。
「ただの迷走神経反射」と決めつけない、除外すべき怖い疾患
VVRは足を上げたり、点滴を全開にすれば改善することが多いです。
ただ、ここで注意したいのが本物の急変との見極め。
カテ後なら、穿刺部からの出血や、心タンポナーデでも血圧は下がります。
「VVRかな?」と思いつつも、「穿刺部が腫れていないか?」「心音は弱くないか?」などと、最悪の事態を否定する視点を常に持っておきましょう。
にゃんPCIは成功したはずなのに、なんで急に血圧が下がるの!?出血!?ってパニックになっちゃう…
わん止血時の痛みや緊張が解けた瞬間が一番危ないんだ。VVRなら足を上げるだけで劇的に改善することもあるよ。でも、怖い疾患が隠れていないかの視点も忘れずにね!
先輩を待たせない!血圧低下時にセットで報告すべき「3つの項目」
血圧低下を見つけたとき、先輩や医師にどう伝えていますか?
「血圧が下がりました!」だけでは、まだ不十分です。
「血圧だけ報告」は卒業!心拍数とセットで伝える重要性
血圧だけを伝えると、必ず「で、脈は?心拍数は?」と聞き返されます。
これまでに説明した通り、心拍数がどう反応しているかで「体の状態」が180度変わるからです。
「血圧は80ですが、心拍数は110まで上がって頑張っています」
「血圧が80で、心拍数も40まで落ちています」
この2つ、受け取る側の緊張感は全く違いますよね。
随伴症状のチェック:冷汗・意識レベル・気分不快はあるか
数字の次に大事なのが、患者さんの見た目や症状です。
特に冷汗の有無は重要。
ショック状態のサイン(ショックの5P)の一つだからです。
- 意識ははっきりしているか?(脳血流の評価)
- 冷汗はあるか?(交感神経の緊張)
- 吐き気やあくびはあるか?(VVRのサイン)
これらをサッと確認するだけで、報告の質がグッと上がります。
報告のテンプレート:アセスメントを添えた「デキる看護師」の伝え方
現場でそのまま使える、黄金の報告セットを紹介します。
| 項目 | 具体的な伝え方の例 |
| ① 血圧と心拍数 | 「BP 80/35、HR 42です。両方低下しています」 |
| ② 随伴症状 | 「冷汗がひどく、あくびを繰り返しています」 |
| ③ 自分の意見 | 「VVRを疑って、今足を上げています。指示をお願いします」 |
ここまで言えれば、先輩も「お、わかってるな」と安心して指示が出せます。
にゃん『血圧下がりました!』だけ報告したら、先輩に『で、HRは?』『患者さんの様子は?』って詰められたことがあって、さらに凹んだなぁ……。
わんそんな時もあったんだね。ぼくも昔はよく先輩たちに指導されて凹んだなぁ…(今思うと的確な指導だったんだけどね……)
そうならないためにも、教えたことを実践していってね!

はい!まずは「BP・HR・冷汗」の3点を確認するクセをつけます!
わんOK!あと、報告の質はアセスメントの質だから、報告セットで伝えれば、先輩たちも納得する報告になるよ!!
まとめ:血圧低下は「数値」ではなく「反応の組み合わせ」で考える!
今回のポイントをおさらいしましょう。
- 血圧低下+頻脈:体が頑張って代償している(出血、脱水など)。
- 血圧低下+徐脈:体が諦めている、または神経の暴走(心機能不全、VVR)。
- VVRの3点セット:血圧低下、徐脈、冷汗(あくびや嘔気も)。
- 迷ったら:まず足を上げる!そして再測定せずに応援を呼ぶ!
- 報告の極意:血圧、心拍数、冷汗の有無をセットで伝える。
血圧低下を見ても、もう数字だけを見てパニックになる必要はありません。
「心臓は頑張っているかな?」と心拍数を確認する。
その一瞬の余裕が、あなたの看護をプロの判断に変えてくれます。
次に血圧の数値が低かったときは、ぜひ心拍数の数字も一緒に確認してみてくださいね。


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