「血圧が下がっているけど、何が原因なの?」と焦ってしまったことはありませんか?
とりあえず足を上げたり、医師に報告したりするけれど、「で、原因は何だと思う?」と聞かれると、言葉に詰まってしまう…。その悩み、実は「血圧の公式」を現場の感覚に落とし込めていないだけかもしれません。
血圧を正しく理解するには、教科書に載っている 血圧 = 心拍出量 × 末梢血管抵抗 という式を暗記するのではなく、「心臓というポンプ、血液という水、血管というホース」の関係性でイメージすることが近道です。
この記事では、臨床現場で本当に使う「血圧アセスメントの視点」を分かりやすく解説します。
難しい言葉を削ぎ落とし、明日からの仕事で「あ、今は血管が開いているんだな」と直感的に判断できるコツを整理しました。
【この記事でわかること】
・血圧を決める3つの要素(ポンプ・水・ホース)の役割
・「浮腫があるのに血圧が低い」という矛盾の正体
・心不全で血圧が低いのに「血管拡張薬(後負荷軽減)」を使う理由
・末梢の温かさで「血管抵抗」を予測するフィジカルアセスメント術
結論から言うと、血圧は「数字」ではなく「臓器へ血液を届けるための圧力」と捉えることで、ケアの優先順位が驚くほど明確になります。
【公式の正体】血圧が下がるパターンは4つだけ!仕組みを「水道」で理解しよう
血圧の公式 BP(血圧)=CO(心拍出量)×SVR(末梢血管抵抗)
心拍出量はさらに1回拍出量(SV)と心拍数(HR)の2つの要素で分けられます。
BP=CO×SVR と CO=SV×HR を合わせると BP=(SV×HR)×SVR
そして、SVは循環血液量と心収縮力の要素で分けることができるので、
血圧 =(循環血液量 × 心収縮力)× 心拍数 × 末梢血管抵抗 と書き換えることができます。
にゃんう〜…
わんどうしたの?
にゃんCOとかSVRとか…
英語が出てきた瞬間に脳がフリーズしたんです〜
わん英語が出ると、わからなくなっちゃうよね
その気持ちよくわかるよ!
じゃあ、1つずつ見ていこうか!
にゃんはい!お願いします!!
血圧の公式 BP = CO × SVR を現場の言葉に翻訳
血圧の公式に使われるものは、全部水道に例えることができます。
COは心拍出量といい、心臓が送り出す血液の量で、ポンプが送り出す水の勢いと量と例えられることが多いよ。
SVRは末梢血管抵抗のことで、毛細血管に血液が流れ込むときに受ける抵抗を示すんだ。これもよくホースの絞り具合と例えられることが多い。
- CO(心拍出量) = ポンプが送り出す「水の勢いと量」
- SVR(末梢血管抵抗) = ホースの「絞り具合」
血圧はこの2つの掛け算で決まります。
つまり、「水の量と勢い」があって、それを「ホースで適度に絞る」から圧が生まれるんです。
心拍出量を決める「水(量)」と「ポンプ(力)」
次に、心拍出量(CO)ですが、これは1分間でどれくらいの量の血液を心臓が送り出したかということなので、1回拍出量(SV)×心拍数(HR)で構成されます。
さらに、1回拍出量を決める要因として循環血液量と心収縮力があります。これらも、循環血液量は「水の量」、心収縮力は「水を送り出す力」と、水道に例えることができます。
- 循環血液量 = ポンプに入いれる「水の量」
- 心収縮力 = 水を送り出す「ポンプの力」
そのため、脱水や出血では「水の量」が足らず、血圧が下がってしまいます。
また、心筋梗塞などで心臓の動きが悪いときは、水を送り出す「ポンプの力」が弱く、血圧が下がってしまいます。
「水が足りない」のか「押す力が弱い」のか、何が悪くなっているのかを区別しましょう。
末梢血管抵抗は「ホースの絞り具合」と考える
最後に「ホースの絞り具合」である血管抵抗です。
ホースの口を指でギュッと絞れば、水の勢い(圧)は上がりますよね。逆に、ホースがガバガバに緩んでしまったらどうでしょう?
いくらポンプが頑張っても、圧はスカスカに逃げてしまいます。
これが、敗血症などで血管が広がって血圧が下がる仕組みです。
小まとめ:血圧低下の4パターン!
今までのことをまとめると、血圧が下がる原因は4パターンあります。
①そもそも流れる「水の量」が足りないとき。
出血や脱水がこのパターンですね。
②水を送り出す「ポンプの力」が弱いとき。
心筋梗塞などで心臓の動きが悪くなった状態です。
③ホースの「絞り具合が緩く」なっているとき
敗血症やアナフィラキシーがこのパターンです
④ポンプの動きに制限をかけるとき。
心タンポナーデなどで心臓が収縮や拡張しにくくなった状態です。
にゃんん!?これってもしかして、ショックの4分類ですか?
わんその通り!
実は血圧を構成する要因を知ることでショックの原因が理解できるようになるんだよ!
にゃん血圧の公式がショックにつながるなんて思わなかったです!
わん知識も病態も実は繋がっているんだよ!
血圧が低いときは「血液」「心臓」「血管」のどこが原因か探してみよう。
【前負荷のナゾ】浮腫んでいるのに「血圧が低い」のはなぜ?
にゃん足は浮腫んでるのに、先生は『脱水で血圧が低いんだね』って言うんです…
なんでなの!?
わんそれはね、きっと「前負荷」がわかれば解決するかもしれないよ!
体の中の水分と、心臓に戻ってくる水(前負荷)は別物
「浮腫んでるのに、脱水?」現場でよく遭遇する、混乱ポイントですよね。
実は、「体にある水の総量」と「血圧を作る水」は別物なんです。
血圧に関係するのは、血管の中を流れて心臓に戻ってくる水分(血液)だけ。
これを「前負荷」と呼びます。
足が浮腫んでいるのは、水が「血管の外(サードスペース)」に漏れ出している証拠なんです。
血管から水が漏れている?「血管内脱水」を見極めるコツ
血管から水が漏れ出すと、血管の中はカラカラになります。これが「血管内脱水」です。
見た目はパンパンに浮腫んでいても、心臓に戻る水が足りないので血圧は下がります。
このとき、大事なのは「今使える水が血管内にあるか」です。
アルブミンが低かったり、炎症が強かったりすると水は血管の外へ逃げてしまいます。
「浮腫=水分たっぷり」という思い込みは一度捨ててみましょう!
「とりあえず輸液」が危険なサインはどこで見る?
血圧が低いからといって、安易に輸液をするのは危険です。
もし原因が「ポンプ(心機能)の低下」だった場合、どうなるでしょうか?
弱った心臓にどんどん水を送り込むと、心臓はアップアップになります。
肺に水が戻ってしまい、呼吸苦や酸素化悪化(肺水腫)を招くことも。
頸静脈の怒張がないか、喘鳴(ヒューヒュー、ゼイゼイという呼吸音)や血混じりでピンク色の泡沫痰(泡立った痰)がないかを必ず確認してください。
にゃん浮腫と血圧に関係する水分が違うからなんですね!
わんそういうこと!
大事なのは「血圧に使える水」が血管の中にあるかどうかなんだ。
にゃんそのアセスメントをするためにも、頸静脈の怒張や呼吸音も確認する必要があるんですね!
わんその通り!
心臓がパンパンで苦しそうなら、水は足さずに引く必要があるんだよ。
【後負荷の矛盾】血圧が低いのに「血管を広げる薬」を使う理由
にゃん血圧低い患者さんなのに、血管を広げる薬を点滴するなんて…
怖くて手が震えるよ〜…
わん大丈夫?
でも、それは前負荷がわかってる証拠なんだ!
にゃん確かに、前負荷のことを知ってから怖くなることが増えたかも…
でも、それなのになんで血管を広げないといけないんですか?
わんじゃあ次は、「後負荷」について教えるね!
そうすればきっと答えが見えてくると思うよ!
心臓にとって「後負荷」は目の前の高い壁
「血圧90台なのに、血管を広げる薬を使うなんて怖い…」
心不全の患者さんで、硝酸薬やハンプを使うときによく聞く悩みです。
ここで出てくるのが「後負荷」。これは、心臓が血液を押し出すときに乗り越えるべき「壁(抵抗)」のことです。
後負荷を下げると、心臓がラクに動ける(=1回拍出量が増える)仕組み
想像してみてください。
重い荷物を背負って急な坂道を登っている(後負荷が高い)人を。
このままでは、いつか力尽きて動けなくなってしまいますよね。
ここで血管拡張薬を使って「壁」を低くしてあげます。
荷物を軽くして、坂道をなだらかにするイメージです。
すると、弱っていた心臓は少しの力でスムーズに血液を送り出せるようになります。
「心拍出量」を増やしつつ、心収縮力で代償させるという判断軸
薬を使って血管を広げれば、一時的に血圧の数値は下がるかもしれません。
でも、心臓の空回りが改善して、全身に流れる「量」が増えれば大成功です。
しかし、低い血圧をそのままにしておくことはなく、カテコラミンを使用して、心収縮力を上げ、血圧を確保しようとしています。
「数字」としての血圧ではなく、「臓器に血液が届いているか」を見ましょう。
尿量が増えてきたり、意識がはっきりしてきたりすれば、その治療は正解です。
にゃん後負荷を減らしつつ、心臓の収縮力を強くして補っているんですね!
わんそうなんだよ!
だからカテコラミンも一緒にオーダーが入ることがあるんだ!
にゃん確かによくその組み合わせでオーダーが入ってますね!
ちゃんと意味がわかれば、怖さも減ってきた気がします!
わん後負荷軽減は、弱った心臓への「助け舟」。
壁を壊してあげることで、結果的に循環が安定するんだよ。
このことも忘れずにね!
【実践アセスメント】先輩への報告が変わる!「血管抵抗」を肌で感じる方法
数値だけじゃない!末梢の冷感・湿潤を確認する意味
「血圧が低いから、とりあえず昇圧薬を増やせば安心だと思ってた…。」
数字だけを追うのは、もう卒業しましょう。
実は、血管抵抗(SVR)は患者さんの肌に触れるだけで予測できます。
血圧が低いとき、まずは患者さんの手足に触れてみてください。
Warm Shock(温かい低血圧)とCold Shock(冷たい低血圧)
触れたときの感覚で、原因を2つに仕分けできます。
- 末梢が温かい(Warm):血管が開きっぱなし。敗血症やアナフィラキシーなど。
- 末梢が冷たい(Cold):血管をギュッと締めて血圧を維持しようとしている。心不全や出血など。
手が冷たければ「体は頑張って抵抗を上げているけど、ポンプや水が足りないんだな」と予測できます。
数式を使って「血圧低下の原因」を論理的に報告するコツ
先輩への報告で、「血圧が低いです」だけで終わらせないコツを教えます。
さっきの仕分けを付け加えるだけです。
「血圧は80台ですが、末梢冷感もあります。Coldの状態だと思います」
これだけで、血圧を上げるための指示を早くもらうことができるようになり、信頼度は爆上がりします。
公式を「現場の状況を説明する武器」として使ってみてください。
にゃん血圧が下がったときは、手足に触って、冷たいか温かいかを確認!
わんそうそう!迷ったら末梢に触る!
公式のどこに異常があるか予測できるようになったと思うよ。
【まとめ】血圧は「点」ではなく「仕組み」で捉えよう
「結局、公式ってどう使えばいいんだっけ…?」
そんなときは、この4つのポイントだけ思い出してください。
これだけで、先輩への報告の質がガラッと変わりますよ。
今回の重要ポイント
- 血圧の正体は「ポンプ×水×ホース」:心機能・前負荷・後負荷・末梢血管抵抗のどれが欠けても血圧は下がります。
- 「前負荷」は心臓に戻ってくる量のこと:浮腫があっても、血管内が水分不足なら血圧は下がります。
- 「後負荷」は心臓の邪魔をする壁 弱った心臓には、あえて血管を広げて「壁」を壊す治療が必要です。
- 迷ったら患者さんの末梢に触る! 温かいか冷たいかで、公式のどの要素が悪いのかを予測できます。
「数字」だけに一喜一憂するのは、もう卒業です。
「今、この人の体の仕組みはどうなっているかな?」と考える。
その姿勢こそが、患者さんの異変にいち早く気づく鍵になります。
血圧の仕組み、少しイメージが湧いてきましたか?
数字という「点」ではなく、ポンプ・水・ホースという「線」で捉える。
それができるようになると、アセスメントがもっと楽しくなりますよ。
にゃんこれなら次に血圧が下がっても、落ち着いてアセスメントできそうです!
わんその意気だよ!
報告するときは、「公式のどの要素が原因だと思うか」を伝えるんだよ!
にゃんわかりました!
今回もありがとうございました!!


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